james dean portfolio

james dean portfolio by dennis stock
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幻のスター ジェームス・ディーン最後の写真集
カメラ / デニス・ストック
ジミーの友人デニス・ストックの詩情あふれるカメラによって描き出された真実のジミー
未発表を含む大型写真12枚セット
 ジェームス・ディーン ポートフォリオ
レンズの羽を持つ天使デニス・ストック
淀川 長治

 初めはガラスの向うを見つめていた気がした。ディーンは死んでいるのだもの。
 ところがこのデニス・ストックのキャメラの一瞬のその目が‥‥‥やがて心をふくらませてきた。
 それはデニス・ストックかまちがいもない詩人だからである。冬が匂い春が匂い秋が迫り夏が香る
その四季の生きた中に、恐ろしいことに嬉しいことに悲しいことに、そこにジーッとこちらを見つめ
るディーンが生きてきたのであった。ディーンのスタイルのその映像を苦心してつかんだのではなく、
ディーンの感情を撰んだこのキャメラにはディーンという若者の詩があふれているのであった。
 ディーンの写真もずいぶん見てきた。このデニスのディーンの中にもすでに見たものがある。
 けれどもこれだけ初めて見るディーンの写真に接すると、ディーンがいったいどれだけキャメラ芸
術家に愛されたかがあらためてわかってくるのである。愛された以上の熱愛だ。
 そのことはディーンのグリンプスに青春があふれていたからであろう。そしてその青春はあたかも
生きているハムレットのように、悲しみと悩みと希望が氷雪の向うの春のごとくかくされていたから
であろう。
 デニス・ストックのキャメラの日はそれをつかんでいる。それはデニス・ストックがまちがいもなく
ディ−ンを愛していたからにちがいない。
  一点にとどまって動かぬ写真というものは、それがすぐれたキャメラで捕らえられたとき、その一枚
から限りない物語をふくらませてゆくものである。時はその時点でとどまり画面は一瞬の姿で動きも
しないのに。
 デニス・ストックはその一瞬をもってドラマを盛り上げてゆく。それはドラマというよりも人間そ
の生きた人間の人生の香りだ。それゆえデニス・ストックのどの一枚の写真にも深い影を感じとる。
そしてその影は見つめてゆくうちに詩をこめて思い出にひろがってゆく。やわらかく悲しい暖かさで。
 デニス・ストックはレンズという羽根を持つ天使である。その天使は青春をさがし廻り冬の林や野
の中にさえ、かくされた青春のその春を見つけてしまう。
 死せるディーンは、このデニスの一瞬のキャメラの中で、生きて呼吸し、ときにはこのディーンは
動きだしてくるかに見える。
 それはデニス・ストックが本当こディーンの生きた瞬間をつかんでいるからだ。
 
ジェームス ディーン ポートフォリオ
 1974.4.20 初版
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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