痔核(じかく、イボ痔)の場合 |
痔のなかでも一番多いといわれる、イボ痔で手術が必要になるのは、下記の3度以上の場合に多くなります。
1・2度では投薬と生活習慣の見直しによる改善で解消されることがほとんどです。
1度:痔核が肛門の中でふくらんでいるだけで脱出はしていない。
2度:内痔核が脱出しても自然と肛門内へ戻る。
3度:脱出した痔核を指で戻さないと戻らない。
4度:常に痔核が脱出したままで指で押しても戻らない。 |
直腸脱の手術法 |
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【結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)】 |
痔核を肛門の壁から切除し、痔核の脱出症状を根治させる手術法です。
結紮には合成吸収糸という10日〜2週間で自然に脱落する特殊な糸を使用しますから、抜糸の必要はありません。
切除範囲・切除個数は痔核の個数・程度に応じて変わりますから、人によって千差万別です。
大体は3〜4か所切除する場合が多いですが、7〜8か所切除しないといけない場合もあります。
退院後は1週間に1回の通院が必要で、退院から1〜2か月で完治します。
痔核の大きさや形に対応しやすいことから、患者への負担を最小限に抑えることが可能で、術後の排便機能を損ないにくい手術法です。
現在の日本でもっとも多く行われている手術法で、40年以上の実績があることから安心できる手術法といえます。
手術は、痔核に血液を運んでいる血管を結紮(縛る)して、痔核とそれに連続した肛門外側の皮膚を切り取り傷口を縫合する手術法です。
ただし、術後出血、痛み、肛門が狭くなる、手術の傷が治りにくい等が起こる可能性があるため、経験豊かな医師による施術が必要といえます。
結紮切除術は術者により様々な工夫が加えられ、「結紮切除術半閉鎖術式」等が代表的なものです。 |
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手術に使用される器具・技術 |
【超音波メス】
1秒間に5万5千回という超音波振動で痔核を焼き切る方法。
1994年に腹腔鏡手術の肝切除用にアメリカで開発された高価な装置で、先端のブレードで痔核を挟み、摩擦熱で組織の蛋白質を変性させ、切除と凝固・止血を同時に行います。
出血が少なく手術時間が短い上、80度の低温なので組織が炭化せず、術後の痛みや出血も少なくキズの回復も早いのが特長です。
【炭酸ガスレーザーメス】
炭酸ガスレーザービームの照射により痔核を”蒸散"させながら焼き切ります。
レーザービームで切除と凝固を同時に行いながら病変部のみをシャープに切れるのが特長。
さらに熱の深達度が浅いため、術後の腫れ・痛みが少ない。 |
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【内痔核硬化療法】 |
硬化(注射)療法は軽度(2度)の内痔核(いぼ痔、軽度脱肛)に適した治療法です。
硬化療法は痔核に硬化剤を注射して、痔核を硬化、縮小させ、出血を止める方法です。
注射は痛覚の無い粘膜の部分に行ないますので、麻酔も入院も不要です。
非常に簡単にな治療ですが、数年で再発しやすいのが欠点です。
出血効果は高いが、痔核そのものを消滅させる訳ではないので、脱出の強い痔(脱肛)には向きません。 |
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ジオン法 |
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【ゴム輪結紮法(けっさつほう)】 |
輪ゴム療法は軽度(2度)の内痔核に適した治療法です。
特殊な器具を使って、痔核の根元にゴム輪をかけ血行を遮断し、痔核を脱落させる方法です。
施術後、1〜2週間程で、ゴムで縛った痔核が壊死し排便中に排泄されます。
痔核の状態によって、ゴム輪がかからない場合や、痛む場合があるようです。 |
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【PPH手術(Procedure for Prolapse
and Hemorrhoids)】 |
全周性脱肛や直腸脱、3度、4度痔核に適した治療法です。
1993年イタリアで開発されもので、痔核より奥にある直腸粘膜を専用の自動縫合器でドーナツ型に切除縫合する事により、痔核の脱出や出血の症状を消失させる手術法です。
従来の痔核切除術より術後の痛みが比較的少なく、日帰りでの手術や早期退院が可能です。
通常の手術では手術の傷が肛門の中と皮膚にできます。
そして肛門皮膚にできた傷が術後の痛みの原因となります。
PPHでは肛門皮膚には傷ができませんから、術後の痛みが非常に小さいのです。
ただし、比較的新しい技術なので、現在おこなっている施設はまだ多くありません。 |
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【レーザー療法(内痔核)】 |
レーザー光線を痔の患部に照射して、レーザーにより焼灼(しょうしゃく)する治療や患部の切断を行います。
レーザーの最大のメリットは、出血がしにくいことです。
内痔核のレーザー療法は大別すると、以下の2種類に分けられます。
1.接触法
レーザー光線を発するチップを直接痔の患部に照射して焼灼(しょうしゃく)する方法です。
医師の思う通りに痔の患部を切ることができるというメリットがある反面、レーザー光線の熱によって患部の圧力に負けて折れる事と、弱いレーザーを当てることで細胞の変化を促す手法が使えない事がデメリット。
2.非接触法
接触法と違って、直接痔の患部に触れずにレーザー光線を照射して焼灼(しょうしゃく)する方法です。
患部に接触しないのでチップの折損はありませんが、レーザーの操作が難しく、患部をどの程度切っているのかといった判断が下しにくいというデメリットがあります。
この非接触レーザー療法のデメリットを克服したレーザー療法が、ICG併用半導体レーザー療法です。 |
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【ICG併用半導体レーザー療法】 |
ICG(インドシアニン・グリーン)というのは、肝機能の測定に用いる色素で、人体に注入しても無害です。
このICGとよばれる色素は、レーザー光線を吸収する性質があり、これの性質を利用しレーザー光線を照射することで治療を行います。
まず、ICGを切除する痔核のみに注入し、レーザー光線を痔核に直接触れないように照射します。
ICGがレーザー光線を強く吸収するので、患部の痔核は焼かれます。
通常の非接触法によるレーザー療法では、患部の下ある肛門括約筋にまでレーザー光線が及ぶ心配がありますが、このICG併用半導体レーザー療法の場合、ICGがレーザー光線を強く吸収するため、目的の痔核以外を傷つけません。
痔核を直接切開せずに、レーザー光線を照射するだけで切るため、出血や痛みが非常に少ない療法ですが、症例数が少ない事と10年間の経過観察がまだ出来ていません。 |
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